神冊通宝、元宝

神冊元年は916年ですから、この頃の日本はまだ平安時代。

皇朝十二銭の使用中で御座います。そして遼と日本は国交がありませんでした。


下図は神冊通宝の小平銭です。左と真中は同一版です。「册」になってます。

真中の物は白銅と思いますが、黒い錆と光の反射から含銀合金かも知れません。

右側の銭は別版で、割合としては少ないかも知れません。サイズも少し大きい。

掲載の他に、横棒2本のになってる別版もある様ですが稀少です。

神册通宝册外框各两横版






左は通宝の背月です。背月も見ませんな。

真中と右は元宝の小平ですな。全く知られていません。凄い珍品の様です。


(2016.05.11 左と真中の銭を追加。)





下図は元宝の折三タイプです。左は銅銭、右は銀銭です。同一版ですな。

遼は国が金銭や銀銭、鍍金銭を発行していました。ほぼ全種の銀銭があるかも知れません。






下図は左から「神冊通宝 折三 合背」「神冊通宝 折三 背陰刻契丹文」。

これらの折三銭は下図の版しか無さそうです。(鍍金とかは存在します。)

陰刻の個体差はありません。母銭に陰刻したという事でしょう。背は上下逆向きです。




さて、背の契丹文字についてです。

神冊の時代に契丹小字は無かった説があります。未完の早期契丹小字はあったのか?

あるいは契丹小字成立後の鋳造という事になりますな。


銭の文字は契丹小字で「契丹万年」です。

kita  
i  で契丹。  
tumu?=万  
ai=年

契丹文字の読みと解釈は全て他所からの引用です。

万の文字の読みtumuは未確定、その他の文字も推定の段階との事です。




下図は通宝の折五タイプです。

左が銅銭。参考書籍「遼金銭幣」にも掲載されています。

右は鍍金銭。キンピカ。エヘヘ笑う所じゃないんだな。当方には本物に見えます。


(2016.05.11 左の銭を追加。)

こいつの背陰刻契丹文も存在し書籍「契丹銭樹鑑賞与投資」に小さく掲載されています。


鍍金が厚目です。表面が赤いです。金原子が熱拡散により徐々に銅の中へ移行したのか、

いわゆる金-銅合金の、ピンクゴールドになっちゃった。という状態と思います。


鍍金品は目で見るとそんなでも無いですが、画像にすると非常に輝いています。

ほんのわずかしか鍍金が残っていない物でもピカピカに映ります。

真鍮と違う特徴ですな。

鍍金銭も色々拝見しておりますが、遼の鍍金は他の時代に見られない程のキンキラ。

そういった所も遼銭ならではと驚愕しつつ感じております。


山人自藏神册元、通宝钱




真贋は永遠の謎。

→次のページ