フリジキタイ 国号銭

下図の古銭は遼の国名が書いてあるのですが、遼とも契丹とも書いてない。

そこを説明するために、長い前置きを書く必要があります。

正しい国名についてです。


● 漢文資料によると、契丹と遼という国名は何度も入れ替わったとの事です。

ところが、契丹語の墓誌には時代に関わらず「遼」という国名の記述が無いらしいです。

たぶん、あのあたりは春秋戦国時代の昔から、燕国で言うと遼西、遼東という地域でした。

現代で言えば遼寧省、遼河、遼東半島など、「遼」とは漢民族が名付けた地名だった訳です。

「遼国」は漢文にだけ出てくる国名という訳です。

(話が外れますが、台湾とは島の名前で、本当は中華民国です。状況が似てますな。)


また契丹語は研究中のため従来の解釈が間違っていたという事もあります。

カラキッタン(哈喇契丹)=遼契丹または黒契丹 と言われているのは誤訳との事です。

「カラ」は推定音の誤りでした。「フリジ」との事です。

インターネットで検索すると下記のPDFファイルが見つかると思います。

文書名:  遼朝國號非「哈喇契丹(遼契丹)」考

文書名:  序論 遼史研究の新しい課題


これに具体的な検証が書いてありますので、興味がある方はお調べ下さい。

墓誌に記載された遼の国名は、 hulʤi  kitai

フリジキタイ国、フリジ国、キタイフリジ国、キタイ国、という記載があるとの事。

キタイの表記を1文字で書く場合、最後の i のくっ付き方の問題(属格形式)により、

契丹小字墓誌では kita-ir-i と書いてある場合もある。との事です。



● さて、上記を前提にすると下図の古銭がよく判ります。 契丹小字銭です。


上の文字

  = 
hu 
ulʤi =hu-ulʤi=フリジ (hulʤi)


下の文字


 
  = 
kita 
ir 
i = kita-ir-i=キタイ (kitai)


chu?-e=顕?、 
nai=首、頭。  これは九五顕首の所で出てきました。

よって銭銘は「フリジキタイ顕首」と読めました。


右側は背月星。






下図の古銭もフリジキタイの部分は同じ文字です。

hu-ulʤi=フリジ、 
kita-ir-i=キタイ、
iú=尊、 
ha=寅?


iú=尊、ha=寅? 虎ではなく寅。ちょっと不明です。あるいは皇帝(ハーン)の略?

「フリジキタイ尊寅?」「フリジキタイ尊ハーン?」



おさらいしておきます。   契丹=kita-i=
  大遼=mos l-iau=




大先生の記事です→契丹文钱币上的“辽契丹”国号如何译? 先生の記事は2013-8-1公開。

時系列としては、当方のこのページの方が早く公開してます。


真贋は永遠の謎。

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契丹文字の読みと解釈は全て他所からの引用です。