㋺ 順天元宝 背千  [唐、幽州]

唐の順天元宝は百文銭だったらしいんで、この千文銭は比率からして妥当かも知れません。

でも文字のデザインが笑いを誘ってますよ。ファンタジー銭ですかね?


ちょっと待って下さい、よく調べると唐の終わり頃に何かありますよ。唐末の幽州。

北方の防衛拠点である幽州という地域に、盧龍節度使と、劉仁恭という人が居ました。

その人達が順天元宝の鉄銭を鋳造し、順天元宝 背千があるとの事。

鉄銭ですか? という事は、

下図に掲げた順天元宝は母銭(あるいは鉄監母)という可能性が出ました。


今ひとつ資料の図版がはっきりしないので、書体が似ているとか判断できませんな〜。




あれれ、良ーく見たら削った痕跡があるぞ?

表面の文字の側面に不自然なへこみと、えぐれがありますよ。




裏面には手作業で切削した様な彫刻刀の痕跡が...



これはまさかまさか、雕母でしょうか? この時代に彫母は無いと思います。

糠喜びする前にこんな考察はどうでしょう。ルーターを使って錆を落とした痕。

それならがっくりです。


という訳でして、こんな物が本当だったなんて、という日が来るのを待ちつつ、

タンスの奥にしまっておこうと思います。

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執筆中にちょっと進展がありました。

同一版の同じ直径63mmの銅製の物がもう1枚入手できました。

その観察の結果が下図です。左が上図と同じ物。右が新しく入手した物。


両方とも切削してあって、削った場所が違いますな。うーむ何となく判りました。

下記は考察結果です。

この順天元宝は母銭から作った鉄母ですが、鋳込んでみたら細部がイマイチだったので、

削って調整しまして、鉄母にしました。完。


ルーターじゃこんなに削れません。錆び落としの痕じゃなくて良かったです。


教訓:同一版を何枚か入手すると違う世界が見えてくる。

古钱奇珍《顺天元宝背上月下千》鼎级(鎏金)大钱

↑当方は目が悪く先生の所持品も怪しく見える事がありますが、どうかお許し下さい。(笑)





真贋は永遠の謎。 彫りィ〜... Holy cow!

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